幸せはパイ料理から
ある日、恋人がこんなことを言った。
「パイ料理が好きだな。真ん中が膨らんで、中の具がいっぱい詰まってるやつ。見た目がすごく幸せそうで好きだな。」
その日からいろんなパイ料理を練習している。アップルパイにシェパーズパイ、コーニッシュパスティとミートパイ、クリームスープパイなど。シェパーズパイは真ん中が膨らまないが、大好きらしい。
幸せなパイ料理が好きだ、と言う恋人はその時に物分りの良い小さい子が、おもちゃ売り場の前でするような言いたいことを言えずに諦めて寂しそうな微笑みを浮かべた。
その日から私は頻繁にパイ料理を作り続けることを決めた。恋人が笑顔で素直に「今日はシェパーズパイを食べたい」と言えるまで。
というわけで今日はアップルパイを焼いた。
パイ生地一枚を半分して、にリンゴを半個使う。
リンゴを細かく切って、水と砂糖、レモン汁を適当に入れる。
少し煮えてきたリンゴの匂いを嗅ぎつけて飼い犬が来た。
これくらいで火を止める。
リンゴをパイ生地に包む。卵黄を表面に塗って、200度で20分か25分焼く。
できあがり。
寄ってきた飼い犬には、煮えていないリンゴを少しあげた。リンゴは大好きなようだ。